第37回北海道氷彫刻展冬季帯広大会

NPO法人日本氷彫刻会北海道地方本部帯広支部
支部長 馬渕 善範

感染予防、つまり新型コロナウィルスとの対策に終始追われる準備となった。
例年は全国より13の選手を受け入れる為に奔走する事が多かったのだが、今大会の出場希望選手はすぐに集まった。理由としては、全国の氷彫刻展が軒並み中止となった為だ。
私もそうであるが、1月中旬から2月上旬までの間に、氷に触れないという事は想像できず。しかし、その想像出来ない事が全国で現実となっていった。
「どうやら帯広はやるらしいぞ」と、そんな噂が全国を駆け回り、多くの問い合わせが私の元にやってきたのが昨年の10月の事。
毎年苦労する選手集めも、1週間を待たずに15選手の出場が決定。東京・愛知・京都・長野そして北海道。氷彫刻展を開催運営する立場として、なんと有難く嬉しい事か。
帯広市開催ならではの気候、十勝開催ならではの食、帯広支部会員ならではのサポート体制。常に帯広の氷彫刻展を主催するにあたり、大切にしてきた事だ。
昨年の10月の段階で、私の頭の中は各出場選手をもてなす事でいっぱいであった。

それからすぐの事である。。。。
感染拡大、警戒ステージ3、集中対策期間、いわゆる感染対策に強いメッセージが発せられるようになった。いよいよ我々も開催を諦める時が来たと思った。
と、同時に進めていたのが、『新北海道スタイル』宣言に基づき、それを読み解く事で、開催する為のロードマップを作成し、少しでも万全に、そして来て頂ける選手の安全対策を図り、受け入れを進めていった。
選手の休憩場所であるプレハブの設置を止め、台座の間隔は2m以上離す。積み込みの手伝いはマスク着用、開会式・表彰式も取り止めた。当然、毎年大好評であった十勝の食満載の懇親会も中止。この懇親会は氷彫刻をする者の連携を深める事が目的で、その結果、色々な情報を共有できる。それが更なる研鑽を高め、技術の向上に繋がる。そう信じている。(ただ私も氷彫刻の話をしながらお酒を酌み交わしたいだけなのかも知れないが。笑)

そしてついに11都府県に緊急事態宣言が発令。予期はしていたが、現実となるとつらい結果だ。東京・愛知・京都から出場をお願いしていた5選手に、こちらからお断りをせねばならない。しぶしぶ電話をした。皆さんは直ぐに納得してくれ、そして来年の来帯を誓ったであった。氷彫刻家の男意気を感じ、そして氷彫刻の仲間である事に誇りを持った瞬間であった。

うん?やばい!15基の台座と氷彫刻用の氷をすでに用意してある。
確かに氷彫刻展。選手同士の技術の戦いの場ではあるが、一番大切な事は帯広市民に氷彫刻の素晴らしさを伝える事。規模は縮小されたが帯広の冬のお祭りを体感してもらう事。
そうなると氷彫刻が5基も減ってしまうという事は、ちょっと寂しい。
私は直ぐに電話をした。最も頼りになる男、札幌支部の佐藤史門事務局長だ。
彼に事の事情を伝えるには多くの言葉は必要なかった。彼も感染拡大による帯広大会の開催を危惧してくれていたのだ。彼は直ぐに3選手に声をかけてくれた。仕事の早い男だ。
結果として、各出場選手の諸事情もあり、8選手に出場で大会の開催に至った。

令和3年1月27日。今年全国で唯一の開催であろう、第37回北海道氷彫刻展冬季帯広大会のスタートを迎える事が出来た。
そこに至るには、帯広のまつり推進委員会はじめ、各関係団体の協力があってからこそである。帯広のまつり推進委員会会長である帯広市米沢市長からも、第58回帯広氷まつり開催に際し、感謝の言葉を頂いた。

と、準備までのお話が長くなりましたが、始まってしまえば氷彫刻の猛者たち。氷彫刻の作品に向かう姿勢は凛としていました。
今年の製作途中の傾向として、無茶な、いや無謀な積み込みや接着が多かった様に思います。私から「これは無理だろう」と声をかけると「いや、帯広大会なら出来ると思って(笑顔)」との返答があります。勝手な解釈ですが、それって帯広支部会員の技術力を信頼してくれているかの様に思ってしまいます。『ならば』、とばかりに、帯広支部会員が寄って集って無理な要求に応えていきます。そして形にしていきます。これも氷彫刻の醍醐味!
多少のハプニングはありましたが、全選手は規定時間内に制作から仕上げまで終了。皆さん怪我なく無事大会終了を迎える事が出来ました。
そういえばちょっとした光景が。本大会の最優秀賞獲得者であるログホテル メープルロッジの山本剛史さんが、自身の作品の前に【北海道知事賞】の掲示がある事に気が付かず、せっせと道具を車に積んでいました。これは優勝への確信から来る行動だったのでしょうか!?どの選手も気になるはずなのに(笑)
ともあれ、選手の皆様、大変ご苦労様でした。そして、有難うございました。

大会を終えて。誰もが新型コロナウィルス感染拡大によって大きく疲弊しています。私自身、各方面から、「何か出来ないか」「何か出来る事はないか」この様な言葉が発せられたり、聞いたりします。だからこそ今思う事は、一人では何も出来ないという事。更に組織のそして仲間の大切さを改めて考えさせられた事。
来年こそは「おもてなしの帯広大会」を開催できる事を、強く願ってご報告とさせて頂きます。

帯広大会順位

1位

作品名
ヤタガラス

選手名
山本 剛史

賞名
北海道知事賞

2位

作品名
闘鶏

選手名
杉浦 恒夫

賞名
帯広市長賞

3位

作品名
「旅立ち」~道東ソロツーリング~

選手名
村上 俊二

賞名
帯広市議会議員賞

4位

作品名
コウノトリの贈り物

選手名
成田 剛司

賞名
NPO法人日本氷彫刻会会長奨励賞

5位

作品名
天使の奏で

選手名
坂本 秀明

賞名
北海道新聞帯広支社長賞

6位

作品名
オウム

選手名
森藤 真介

賞名
NPO法人日本氷彫刻会北海道地方本部会長賞

7位

作品名
エンゼルフィッシュ

選手名
豊吉 路子

賞名
帯広商工会議所会頭賞

8位

作品名
梟将

選手名
神吉 英典

賞名
一般社団法人全日本司厨士協会北海道地方本部会長賞