鰤宝(しほう)をご存知か

ホテルノイシュロス小樽 兼崎 義明

東しゃこたん漁協が船上活じめで販売拡大に乗り出した。美国沖で大定置を営む有限会社丸榮水産が活じめを実施。
漁協職員が脂肪率の測定などで厳選したブリにブランド名称「鰤宝(しほう)」を冠し、2019年10月から出荷を開始。鮮度の良さが評価され、日によって野じめに比べ2倍近い価格が付くなど順調なスタートを切っている。(週刊水産新聞2019.11.11より)

その様子を学べるという後志総合振興局産業振興部水産課が主催の『後志の漁業を知ろうツアー』に10/22参加しました。
別紙のスケジュールどおり、倶知安出発の貸切りバスに余市で6時過ぎに合流し古平漁港までは約20分。
後志管内には小樽市、余市郡、古宇群、岩内郡、寿都町、島牧村、そして今回訪れた東しゃこたん漁協があります。

船上活じめ、重さ7kg以上、体脂肪率15%以上の厳選された鰤(ブリ)が=鰤宝(しほう)と呼べるブランド鰤です。
当日は約15トンの鰤の水揚げがありましたが鰤宝のタグを付けられたのは僅か2本だけでした。(11月になれば量が期待できます)
鰤は船から港に上げられ、サイズ毎に選別し大きなプールに入ったままフォークリフトで運ばれてゆく。7kg以上の活締めはとても丁寧に扱われ、台の上に置かれた小さな布団の上でエラの中を流水で丁寧に洗った後、デジタル計測器で脂肪率計測。無事認証タグを付けられると氷と共に発泡スチロールへ。

鰤宝の見学後は漁協内へ。「カランカランカラ~ン ♫ 」と鳴る大きなベルの音が競り開始の合図。山の様に積まれた発泡スチロールを囲み、魚種毎に進む競り人と仲買のやり取り。
「ハイ~ ○%×$☆♭#▲!※」 何を言っているかよく聞き取れませんが、関係者に伺うと今日はギャラリーが多いので本人はかなり意識して解りやすく喋っています」と。

すぐ隣にある加工工場は衛生管理がとても行き届いており、甘海老、蛸、カスベ等々が加工調理され主に本州に向けて出荷され、隣の直売所でも販売されています。
そして古平の新家寿司さんで昼食。鰤の食べ比べは何と贅沢な。
① 普通の鰤、②鰤宝(生15%脂肪)③鰤宝(急速冷凍昨年もの20%脂肪)を3部位(腹・背・かま)。野じめの鰤との違いが舌の上ではっきり。

次は甘海老(ホッコクアカエビ)3種(活、生、沖漬け)。「甘エビ」という名前のとおり、生食するとたしかにほんのりと甘く、とてもおいしく感じます。この甘みを感じさせる成分はグリシン、アラニンなどのアミノ酸で、生きているときはほとんどない成分とされています。多くの動物は死ぬと今まで働かなかった自己分解酵素が活動を始めて、体を構成する主な成分のたんぱく質をアミノ酸に分解します。
甘エビの場合、活か新鮮すぎるとこの酵素がまだ働かず、甘くない「甘エビ」になってしまいます。
しかし次に食べた2Lサイズのボタン海老は生きていても甘みがしっかり口の中に行きわたるのですからこれまた不思議なものです。 途中、振興局水産課職員によるスライドを使っての説明もあり、地域別の収穫量、旬を改めて学ぶ事も出来ました。

料理にはストーリーがあります。生産地(者)、食材、調理法、食器、サービス、そして空間。食材が新鮮で美味しい事は勿論大切ですが、如何にお皿の上にストーリーをのせられるかが大切で、説得力と感動のある料理になるのだと思っていますから、農家さんや漁師さんと直接お会いし話す事や、自分の目で見て感じる事が沢山あります。その感性がメニューを考え調理する中で何か解らない目に見えない力が働く事がきっとあるはずです。

今回の素晴らしいツアーを主催して下さった後志総合振興局産業振興部水産課の皆さんには大変お世話になりました。
生産地でも市場でもいい興味を持とう。お取引のある肉屋、魚屋、ベーカリーやペストリーでも何でもいい。体験と舌の記憶に勝るものは無い。今の自分が本やインターネットだけで学んでいるのだとしたら将来の可能性は限りなく低い。今すぐ厨房を飛び出して体験を積もう。「なかなか時間がなくて」とか言っているのなら・・・貴方がそれまでの人という事です。